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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第25章 ある者の独白



レオナルドの義眼の力を持ってすれば、相手の目からその記憶を読み取ることも出来る。義眼にそのような使い方があると判ったのはつい最近の事だった。
すぐにアメリアの目から教会に来ていた客の顔を読み取ろうと試みたものの、レオナルドの眼に見えたのは靄(もや)のかかった顔ばかりで、顧客を突き止めることは出来ないでいた。

アメリアは思い出したくもない過去の記憶に無意識に蓋をしてしまっていたのかもしれない。
レオナルドはそれでもアメリアの目を覗き続けたが、無理に記憶を覗かれた影響からかアメリアは体調を崩したため、そこでクラウスからストップがかかった。

イアンの記憶を辿ることが出来れば──客の一人でもいい、誰か一人でも尻尾を掴むことが出来れば、そこから情報を引き出すことが出来るのではないか──残された手数は少ない。
もしイアンから客の情報を引き出せなければ、スティーブンもクラウスも、それぞれが持つ最終手段に手を出さなければならない。

スティーブンはこの件で、クラウスがいつも以上に無理をするのではないかと気にかけていた。
クラウスは今まで解決してきた事件において、フラリと行き先を告げずに出かけ、疲労困憊の姿で戻って来ることがあった。
その時に必ず、クラウスは貴重な情報を掴んでいる。
スティーブンは薄々クラウスが何処かで一人何かに身を投じて情報を入手してきているのだろうと勘づいていた。

しかし、スティーブンは情報の入手先をクラウスに尋ねたことはない。
行き先を告げないところからしてクラウスはその入手方法を知られたくないのだろうと推察されるのはもちろんだったが、実のところスティーブンにもクラウスには秘密にしておきたい事があったからだった。
スティーブンがクラウスの秘密を探れば、自分も痛い腹を探られかねない。
そう簡単に自分の秘密を知られるつもりはスティーブンにはなかったが。

クラウスがどんな方法で誰から情報を得ているのかスティーブンはハッキリとは把握していない。
けれどクラウスがその身を削っている事は明らかだ。
今回の事件で必要以上にアメリアに肩入れしているクラウスの事だ。
彼女のためならばいくらでも無理をするだろう。
クラウスが無茶をする前に、スティーブンはなんとか事件解決の糸口を見つけたかった。
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