第25章 ある者の独白
段々、子供の事が可哀想に思えてきた。
──はじめからそう思わなかったか? いや始めは関心がなかったからどうという事も思っていなかったよ。冷酷? そう言われてもな。俺はそういう奴だから。
子供は健気に生きていた。
他の子供の為に、自分の体を差し出す子供もいた。
その子供をまたさらに守ろうとする子供も。
──ああ、そうだよ。あのきょうだいさ。名前? どうにも人類の名前は発音しにくくてね……。分かったよ。イアンとアメリア。これでいいかい。
土地に縛られた可哀想な俺に転機が訪れたのは、売人がやってきたある晩のことだった。
十字の柱──そう、十字架だ。十字架が落ちて来て売人とボクシサマに突き刺さった。
そうしたらふっと体が軽くなった。契約が消えたんだと悟った。ボクシサマの体に印が仕込まれていたんだろう。アイツが死んで、俺は晴れて自由の身になった。
長らく動けなかった分、どこへ行こうか何をしようかそれはもう楽しみで仕方が無かった。
だけど、ふと。
子供達のことが気になった。
毎日可哀想な目にあっていたあの子達が、これからココで生きていけるのか。
柄にもなく、心配になった。
──情が湧く、ね。まぁあれだけ日々観察していればな。そういう気持ちになるのもおかしくはないだろ?
一人の子供──イアンが“神様”の力を得たってはしゃいでいた。
そう仕向けたのは俺なんだが、イアンは気づいていなかったらしい。
──え? お前の話し方は回りくどいって? まぁそう言わずに聞いてくれよ。いいじゃないか、長いこと誰とも話す機会が無かったんだからさ。くどくど話したくもなるさ。
幻術を使って、イアンが“神業”を得たように思わせた。
そうしたらどうだ。“地上の楽園”にいた頃とはイアンの顔つきが変わったじゃないか。
“神業”を得て、イアンは元気になった。彼についていく子供達も元気になった。
もう酷い目に会う事もない。俺の幻術の力が子供達を護っているから。
──何故素直に力を貸さなかったのかって? 考えてもみろよ。この見た目の俺が突然現れてみろ。怖がるにきまっている。イアンに操られているフリをした方が楽だったんだよ。アレコレ説明したって、子供達が聞いてくれるかなんて分からなかったしさ。
俺の今後の人生の目標は、子供達を護る事になった。
彼らにあだなす全ての者から、俺は護ろうとしたんだよ。