第24章 “Long time no see.”
『皆さま、お待たせいたしました!! ──あの不倒のオズマルドをも凌駕した拳の持ち主、全世界が待望した漢の中の漢が再びリングに上がる!!
──クラウス・フォン・ラインヘルツー!!』
マイクを持った異界人のレフェリー兼司会者がクラウスの紹介をすると、また会場内が湧き上がった。
リングに張られたロープをくぐり、クラウスの姿がリング上に現れると会場のボルテージは一気に最高潮になる。
『さぁ、この気高き獣を仕留めるハンターは現れるのか?! それでは早速参りましょう、第一試合の相手は──怒れる鉄槌、ライナーK・ウォルフ!!』
紹介の後、リングに上がったのはクラウスの背丈より倍以上に大きな異界人だった。
体のあちこちに窪みがあり、そこから時折湯気のようなものがシューっと音を立てて噴きだす。
体を左右に軽く揺らしながら、ライナーKはクラウスとの対戦の火蓋が切って落とされるのを今か今かと待ち構えている。
クラウスも、いつ相手がかかってきても良いように体勢を整えている。
『レディー……ファイッッ!!!』
ゴングがなると同時に、ライナーKのトンカチのような拳が唸りを上げてクラウスに向かっていった。
瞬時にその動きを見切ったクラウスは、軽く身をよじったかと思うと、床を蹴って鋭く重い一発を相手の胸元に打ち込んだ。
「ぐ、ぅ……」
呻いてライナーKの体はリング上に沈む。
すぐに試合終了の鐘が鳴り響き、レフェリーがクラウスの腕を高く上げた。
『勝者ぁーッ、クラウス・フォン・ラインヘルツゥー!!』
あっという間にリングに沈んだ巨体を眺めながら、スティーブンはため息をついた。
「…おいおいクラウス……もっと間を持たせてくれなきゃ困るよ」
おそらくクラウスは勝負を挑んできた相手には真剣に向かわなければ、なんてことを考えているのだろうが、クラウスに素手で勝てる者など滅多にいない。
この調子で対戦相手を潰していってしまえば、レオナルドがイアンを見つける前に相手がいなくなるかもしれない。
そうなる前にイアンも何らかの動きを見せるかもしれないが、スティーブンとしては何かが起きる前にイアンを確保したい考えだった。