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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第24章 “Long time no see.”



「この間...ハンナ達に会いたいと頼んだら、風邪が流行っているから面会禁止だとスティーブンさんは仰って……その前に面会をお願いした時はあの子達が施設に慣れるまで待って欲しいと言われました。でも、クラウスさんは最初に約束してくれたんです。すぐに面会出来るよう取り計らうと。クラウスさんは約束を破るような人じゃない……なのにハンナ達の事となると……」

クラウスさんを信用していない訳じゃない。
だけどこうも面会を却下されると疑いたくもなる。
ハンカチの事だって、渡してくれたかどうか定かじゃない。
クラウスさんは何も言ってくれない。今までの彼を思えば、すぐに渡してくれそうな気がするのに。
面会禁止でも、ハンカチを渡す事くらいは出来ないものだろうか。
疑いだすとキリがない。

「…私は、調査担当じゃないから詳しい事はクラウスに聞かないと分からないわ。でも、もし何か情報が入ったとしたら、必ず貴方に一番に知らせるはずよ。…まだ付き合いの短い私達を完全に信用するのは難しいかもしれないけれど、そこだけは信じて欲しい」
「会いたいんです、私、みんなに」
「ええ、そうよね。分かるわ……家族に会いたい貴方の気持ちは痛いくらい分かる」
「寂しいんです……こんなに素敵な部屋を与えてもらって、温かい食事に清潔な寝床も、話し相手になってくれるみなさんも、クラウスさんもそばにいてくれるのに、私、どうしようもなく、寂しい。求めすぎなのは分かっています、でも……」
「アメリア」

ぎゅっと、K・Kさんに抱きしめられた。
こんなに親身に寄り添ってくれる人がいるのに、私はなんて我儘なのだろう。
心に空いた穴を埋めるのに、まだ足りないと喚くばかりの私をK・Kさんは優しく抱きしめていた。

***********

─ ライブラ事務所・執務室 ─

「スターフェイズさん、報告したい事が」

事務所にやってくるなり、ジャケットの中をもぞもぞと探りながら、ザップはスティーブンの元に近づいた。
いつになく真剣なその目にスティーブンはコーヒー片手に部下の報告を待つ。

「最近妙な噂が広まってまして」
「妙な噂?」
「はい、これが──っ?!」

ザップはジャケットの中から何か取り出そうとした体制のまま、床に沈んでいった。
代わりにスティーブンの目の前に現れたのはチェインの姿だった。
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