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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第23章 You raise me up.



以前、ツェッドさんは私やハンナ達の前で紙でできた蝶や鳥を風で操って見せてくれた事がある。
その時もとても綺麗だと感動したものだけれど、今見せてもらったものはまた一段と優雅で美しかった。

大きな鳥には長い尾がついていて、宙を舞うとその長い尾がふわりと広がって美しく波打つのだ。
どうやって操っているのか不思議だけれど、鳥はちゃんと羽根も上下させてまるで本物の鳥が舞っているようだった。
鳥はふわりふわりと舞い、私の元までやってきた。
そっと手のひらを差し出すと鳥はそこで羽根を休めるようにして動きを止めた。

「す、ごい…! とっても綺麗でした!」
「蝶が一斉に飛ぶのも綺麗ですけど、この大きな鳥が舞うのも素敵ですね!」

私もレオナルドさんも興奮気味にツェッドさんに感想を伝える。
ツェッドさんは少し照れ臭そうに頭をかいた。

「公園でのパフォーマンスが楽しみですね!」
「パフォーマンス……そっか、ツェッドさんは公園でこれをお披露目しているんでしたっけ」
「ええ。今度この鳥を使おうかと思って。お二人の反応を見られて良かったです」

ライブラの人達は、ライブラの活動以外にもお仕事を持っている人が大半らしい。
いくらかお金は出ているみたいだったけれど、ライブラのお仕事だけでは生活費としては足りないそうだ。

「…レオナルドさんも、ピザの配達のお仕事されているんですよね」
「うん」
「……私も」
「うん?」
「私も、何か出来る仕事ってないでしょうか」

ツェッドさんとレオナルドさんは驚いた顔で私を見ている。
そんなに意外だったのだろうか。

「私、ここに住まわせてもらっていますが、食費も光熱費も何もお支払いしていないから……」
「いやそれは気にしなくていいと思いますよ。貴方には仕方ない事情があるんですから」
「ツェッドさんの言う通りだよ。クラウスさんだってお金のことなんて言わないだろ?」
「言われたことはありませんけど……でも、病院にかかるお金だとか、この服だって、安いものじゃないです。何も気にせずいろってのは無理があります」
「…まぁ、気持ちは分かるけど……」
「掃除とか、何か手伝えることはないかなって自分なりに考えたりしましたけど、逆に私が手を出すとご迷惑かかりそうな事ばかりで。何か私にもツェッドさんみたいな特技でもあれば良かったな、なんて……」



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