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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第23章 You raise me up.



「僕らだって知った時はかなり動揺したんだ。あの子が知ったら僕らの比じゃないだろう」
「…いつまでも隠し通せるとは思えない」
「隠し通すのさ。隠し通している間に、子供達を見つけるしかない」
「しかし…!!」
「おや諦めるのかい、君が」
「断じて諦めなどしない」

クラウスの表情が一気に険しくなる。
気迫に満ちたその表情に、慣れているはずのスティーブンもたじろいでしまうほどだった。

「悪かった。君を追い詰めるつもりはないんだ、クラウス。確かに現状何も手掛かりもない。時間ばかり経っていまだ核心になにひとつ迫れていない。冷たく聞こえるかもしれないが、子供達だって無事でいるとは限らない」

クラウスの顔がまた一段と険しくなった。
体からは怒りのオーラが吹き出し始めている。

「だけど、それでも生き方を曲げないのが君だろう。頑固なまでに愚直に光を求めて生きるのが君だ。あの少女にとって、子供達の事は一筋の光だ。その光を、君が消してしまっていいのかい。
事実を彼女に話して楽になれるのは、君だけだよ」

ぐ、とクラウスは何かを噛み締めるように言葉を飲み込んだ。
スティーブンの言う通りだ。
事実を話せば、アメリアがどれほど傷つくことか。

不安に怯え、日々クラウスに依存を深めていく彼女に事実を知らせる事がどれほど酷な事か。

僅かでも可能性があるならば、子供達の保護に全力を尽くさねばならない。
それが自分に出来る唯一の事だと、クラウスは改めて思い直した。


***************

─数週間前─

ダニエル・ロウ警部補は、クラウス達が現れるなり勢いよく頭を下げて謝罪の言葉を述べた。
いつもの高圧的な態度は鳴りを潜めていて、この後警部補の口から語られる言葉が良い報せではない事を、クラウスとスティーブンは悟っていた。

「…施設に向かった子供達が、行方不明だ」
「どういう事だね」

冷静に話を聞こうとするクラウスの声音が、若干震えている事に気づいたのは隣にいたスティーブンだけだった。
クラウスが動揺している。そして同時に怒っている。
その怒りは誰に向けたものなのかまでは、スティーブンには分からなかった。

「子供達が来ないと施設から連絡が入ったんだ。渋滞に巻き込まれでもしたかと思ったが、違った。子供を乗せたバンは事故を起こしてやがった」
「それで」

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