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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第22章 少女の影を探して



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「なぁ頼むよぉ助けてくれやレオ君よぉぉ」
「俺だって忙しいんですよ」
「そこをなんとか頼むよぉぉぉこのままじゃマジ俺、番頭に殺されちまう」

まとわりつくザップをズルズルと引きずりながら、レオはヘルサレムズ・ロットの街中を歩いていた。
いつもは遠慮なしに罵倒の言葉を放ってくるザップが、今日はゴマをすってレオにすり寄って来た時から嫌な予感はしていた。

レオは前にスティーブンに頼まれたアメリアの兄の行方を追っていた。
手掛かりは一度目にした兄のオーラと、アメリアの証言から描かれた似顔絵だけ。
人間異界人を問わずたくさんの生物がひしめき合うここヘルサレムズ・ロットでは、砂漠の中で一本の針を探すようなものだった。

ただでさえゴロツキ共に目をつけらやすいレオナルドは、周辺を警戒しながら義眼の力を使う日々が続いていて、疲労も溜まっていた。
そんな折に、ザップが泣きついてきたものだから、レオの心労はピークに達していた。

「大体、隠し事してたアンタが悪いんでしょーが」
「いや俺だって“リアーナ”の事は、報告上げようと思ってたんだぜ? そーれがタイミング悪く番頭が先に気づいたってだけでだなぁ」
「その“リアーナ”に会ってからだいぶ経つんじゃないんすか」
「だからよぉ…そこはホレ、あれだよ。本当に探してる“リア”と同一人物かしっかり確かめた上で報告しようと思ってだな…わざと泳がせてたわけよ」

ザップの言い分はまともに聞こえた。
確かに別人と間違えて全く無関係の人間を巻き込むわけにはいかない。
けれど、レオナルドにはザップが本当に慎重に“リアーナ”の事を探っていたのか疑わしく思えてならなかった。

それはひとえに、日ごろのザップの行いのせいであった。

「本当にそうなんすか? どーせまた体の相性が良かったからとかスゲー下らない理由で報告してなかったんじゃないっすか」
「は、オメー陰毛童貞のクセに何言ってくれちゃってんの?」
「いたたた!! ちょ、ドーテーは関係ないでしょーがっ」
「るせー!! このヤロー!!」

背中にのしかかっていたザップがボカスカとレオナルドを殴り始めると、レオナルドにくっついていた音速猿のソニックがとばっちりを免れようとパッと走り出した。
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