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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第19章 熱にうかされたふたり



「ギルベルトさんは、クラウスとあの子の事どう思いますか」

我ながら漠然とした質問だと思いつつ、スティーブンはギルベルトの返答を待った。

「──スターフェイズ様は、お二人の距離が近くなる事を危惧しておいでのようですが」

書類から顔を上げて、ギルベルトは穏やかな笑みを浮かべる。

「私個人としては、坊っちゃまの新しい一面が見られて嬉しゅうございます。アメリア様とご一緒の時の坊っちゃまは、いつになく楽しそうで。お二人のやりとりは見ていてとても微笑ましいものです」

「......どうも僕は物事の裏側を見ようとする癖が抜けなくて。あの少女も、まだ何か隠しているんじゃないかと思ってしまうんです。K・Kやギルベルトさんのように、手放しで受け入れられない。僕は、心が狭いのでしょうか」

「クラウス様は、素直でお優しい方です。ですから、何事も素直に受け入れ、信じようとされます。
もちろん坊っちゃまもこの世界において全てが『善』で無い事はご承知ですが...スターフェイズ様がクラウス様の代わりに疑って下さる事で、随分助けられております。

クラウス様の苦手な部分を貴方様が補って下さっているからこそ、坊っちゃまは十二分に力を発揮できるのです」

──ですから、貴方様はどうかそのまま御自身が思うようにお二人を見守って下さい。

ギルベルトの言葉を最後まで聞き終えると、スティーブンは「敵わないな、ギルベルトさんには」とほんの少し笑みを浮かべて呟いた。


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✳︎クラウスside✳︎

─ヘルサレムズ・ロット某教会─

教会に足を踏み入れると、外の世界とは空気が変わったように感じる。ピリリと身の引き締まるような思いがするのは、教会の持つ厳粛な雰囲気のせいだろうか。
私がやましい気持ちを抱えているからだろうか。

教会の中央に堂々とそびえ立つ大きな十字架に、鋭い視線を差し向けられている気がする。

入り口すぐの長椅子に、静かに腰を下ろす。
私の他には数名の礼拝者がいるのみでミサの時間でもない為、教会内は静寂に包まれている。

両手を組んで額にあて、目を瞑る。

先刻、自分がしでかしてしまった事を振り返った。

口付けを拒まれても強引にするべきだったかもしれない。
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