第19章 熱にうかされたふたり
手伝うと言ってクラウスさんは当たり前のように私のシャツのボタンを外し始めた。
着替えるだけなら一人でも出来るのに、彼は無言で私の服を剥いでいった。
シャツの下から汗で張り付いたキャミソールが現れた。
素肌を晒すのは初めてではないけれど、表情ひとつ変えずに淡々と服を脱がせるクラウスさんが、何を考えているのか分からず、少し怖い。
「あの、クラウス、さん?」
「……何かね?」
声をかけるとようやくクラウスさんは顔を上げた。
「自分で、出来ますから」
「背中は自分では難しいだろう?」
お湯で満たされた洗面器にタオルをつけて、クラウスさんが力強く絞ると、ボトボトと湯がしたたり洗面器の中の水面が大きく揺れ動いた。
クラウスさんからそのタオルを受け取ろうとしたけれど、タオルは私の手元にやってくることはなかった。
幾分か水分を含んだタオルがキャミソールの下にそっと差し込まれる。
腰のあたりからゆっくりと上の方へタオルが動く。
それに伴ってキャミソールの裾が捲りあがっているような気がするものの、振り向いて確認は出来なかった。
今、どうしてこんな状況になっているのか、理解が追い付かない。
気恥しいやら申し訳ないやら、どうしたらよいのか困っていると、首筋に温かいものが触れた。
するりと髪の毛をかきあげられたかと思うと、また首筋に熱がともる。
「っ、クラウスさん……?」
私の呼びかけに彼は反応しなかった。
困惑する私を尻目に、クラウスさんは首筋に幾つものキスを落とす。
はじめは軽く触れるだけだったキスは、少しずつ肌をついばむようなものに変わっていった。
キスの雨が止むと、今度は湿り気を帯びた生温かいものが肌の上を這いずり始めた。
いつしかタオルは行方をくらまし、クラウスさんの指先が背中を上に下にと肌のごく表面をなぞるように動いている。
「アメリア……続けてもいいだろうか」
耳元で囁かれた言葉に、体がゾクリと震えた。
その震えを肯定と取ったのか、クラウスさんの歯が耳たぶを優しく噛んだ。
熱い吐息が耳にかかり、ぬめりとした舌先がまた首筋をなぞりだす。
「んっ……」
こらえきれずに漏れ出た声に、一瞬クラウスさんの動きが止まったような気がした。