第18章 ライブラへようこそ
話がひと段落したところで、執務室に通じる扉がゆっくりと開いた。
「……あの、ごめんなさい。私、寝てしまったみたいで……」
扉から申し訳なさそうに顔を出したアメリアに、また皆の視線が集まる。
その視線に威圧は含まれていないのだが、一斉に向けられた視線に怯えてか、アメリアの顔は扉の向こうに徐々に隠れていった。
「気にすることはない、疲れていたのだろう。……ここに来るまで色々あったのだから」
クラウスが扉に近づいていくと、隠れていたアメリアがまたゆっくりと顔をのぞかせた。
身長差もあいまって、上目遣いでクラウスを見つめるアメリアはまるで小動物のようで、彼女を見るクラウスの目は自然と優しく細められていった。
「君の部屋の中を案内しよう。構わないかね?」
「ええ、お願いします」
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「今日からここが君の部屋だ」
ミスタ・クラウスが扉を開けると、まるでホテルの一室のような部屋が広がっていた。
赤と青の細かな模様の入った絨毯が床一面に敷かれ、大きな窓のそばには真っ白な猫足のテーブルと、揃いのデザインの白い椅子が二脚置かれている。
視線を右に移すと、小さなカウンターのようなものが見えた。
奥には冷蔵庫があるようで、どうやらそこはキッチンのようだった。
部屋の中央から奥に目をやると、いくつか扉が目に入った。
おそらく、この部屋以外にも何かの部屋があるようだった。
仮住まい、というにはあまりにも広く豪華な部屋に、私はなんと言ってよいのか分からず立ちすくむばかりだった。
「奥には寝室と、バスルームを用意してある。取り急ぎ造らせたのだが、他に必要な部屋があれば遠慮なく言ってくれ」
「今のままで十分すぎるほどです! 私には......」
──身に余ります
そう言いかけた自分に待ったをかける。
先程病院で言われたミスタ・クラウスの言葉が頭をよぎった。
過剰、だと口にしてしまえばミスタ・クラウスのご厚意を無下にしてしまう。
「──いえ、お気遣い感謝いたします、ミスタ・クラウス。用意していただいたお部屋で十分です。ありがとうございます」