第18章 ライブラへようこそ
「仮定の話だよ」
驚くクラウスに、スティーブンは軽く笑って答えた。
「愛に年齢を持ち出すなんて野暮……と言いたいところだけれど、確かに彼女まだ未成年なのよね」
「だろう?」
「…だけど、彼女の自称でしょう“16”だっていうのは。ほらツェッドっちだって“13歳”だけど、それはあの伯爵の元から離れてからの年数でしょう? 彼、生まれてからの年数だったらもっと経ってるはずよね。彼女も……彼女の本来の年齢なんて誰にも分からないんじゃないの」
「K・K、君なかなか悪いことを考えるね」
「あんたに褒められるのは嬉しくないわね」
急に険しい顔を見せたK・Kに、スティーブンは乾いた笑いを浮かべながら頭をかいた。
「大丈夫よクラっち! 年はなんとかなるわよ!!」
ぐっと親指をたてて見せるK・Kに、クラウスはため息をつく。
K・Kはクラウスを応援しようとしてくれているようだったが、今のクラウスにはその気はさらさらなかった。
「……私は、彼女とそういう関係になるつもりは無い」
「あらぁ、どうして?」
「今、我々の他に頼る者のないミス・アメリアに言い寄るなど、到底許されることではないだろう。それは彼女の弱みにつけこんでいるのと同意だ」
「クラっちらしいわねぇ……本当に真面目で頑固なんだから」
「この話は終わりにしよう。……彼女に対して失礼になる」
「そう……分かったわ」
K・Kは物足りなさそうな顔をしていたが、クラウスの表情が全く変わらないのを見て取って、それ以上そういった話題を出すことはしなかった。