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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第18章 ライブラへようこそ



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「集まってもらって感謝する。皆に改めて紹介しよう。ミス・アメリア・サンチェスだ」

「……よろしく、お願いします」

クラウスの隣に立つアメリアの姿は随分と小さく見えた。

ライブラの主なメンツが揃ったクラウスの執務室では、彼女が気圧されて縮こまってしまうのも無理はない。

所在なさげに佇むアメリアに、彼女の全てを探るように遠慮なしに数多の視線が注がれていた。

「彼女の身の安全を考え、事態が収束するまでここに留まってもらう事にした。普段は私が彼女についているが、私が不在の場合は皆にミス・アメリアの事をお願いしたい」

リーダーであるクラウスの言葉に、異議を唱える者はいなかった。

スティーブンと同じように、ライブラのメンバーでもない一般人のアメリアを事務所に立ち入らせる事に対して危惧する者も中にはいたかもしれない。

けれどそれを顔に出したのは、スティーブン以外にはいないようだった。

受け入れられたのかどうか定かでは無かったものの、ハッキリと拒絶を示されなかったことに、アメリアは少しホッとしていた。

クラウスからの紹介が終わると、右目に黒い眼帯をした金髪の女性がアメリアの元に駆け寄ってきた。


「ハーイ、アメリアっち。K・K よ。よろしくね」

「よろしくお願いします」

頭を下げるアメリアに、そうかたくならないで、とK・Kは言葉をかけた。

愛称で自分を呼んでくれるところをみると、きっと彼女は優しい人だと、アメリアは思った。

「何か困ったことがあったら遠慮せずに言うのよ? クラっちには言いにくいことも女同士なら言いやすいでしょ。あ、ほらこの子、チェインって言うんだけど、この子もきっとよく面倒見てくれるから」

K・Kとアメリアの様子を見ていたチェインを捕まえて引き寄せると、チェインの首元がしまるのも構わず、K・Kは笑顔でチェインとアメリアに握手をさせた。

「お姉さん達にどんと任せなさい。ここでは貴方の好きなようにしていいんだからね」

じわりと、アメリアの目に熱いものがこみあげてきた。

『教会の外は地獄』

そう教えられえてきたのに、アメリアが出会った人々は優しい人ばかりだ。

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