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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第18章 ライブラへようこそ



アメリアの言葉に、長老もクラウスも驚いた顔で彼女を見つめた。

けれどアメリアは凛とした表情のまま、長老の目をしっかりと見据えている。

「その機能が復活しないとも限らないのでしょう?
...私、これ以上ミスタ・クラウスにご迷惑をおかけしたくないのです。その術式のせいで何か面倒事が起きる可能性が少しでもあるなら、その可能性を排除したいです。それでもし私の身に何かあったとしても、私は構いません」

きっぱりと言い切ったアメリアに、長老は念を押すように再度意思の確認をした。
アメリアはそれに力強く頷く。

「しかしミス・アメリア、何が起こるか分からないと……」

決断しかねるクラウスにアメリアは首を振ってみせた。

「構いません」

アメリアの決意が揺らぎそうにないのを見て取って、クラウスも同意せざるを得なかった。

──彼女は私と同じだ。一度こうと決めたら、それを覆すことはしない。

「……何があっても、私は君を守る」

クラウスの言葉に、アメリアは静かに微笑んだ。


「解除するのに、君の体に直接詠唱式を書き込ませてもらう。すまないが、背中を出してもらっていいかな」

「私は外で待っていよう」

背中だけとはいえ、若い女性が人前で肌を晒すのだ。
いつ何時も紳士であることを矜持としているクラウスにとって、それは当たり前の選択だった。

けれど、アメリアの手はしっかりとクラウスの腕を掴んで離さなかった。

「ミスタ・クラウス……そばにいて下さいませんか」

クラウスを見上げるアメリアの瞳は不安げに揺れている。

何があっても構わない、そう口にはしたものの不安が全くないわけではないのだろう。

「…承知した。構わないだろうか?」

「ああ、構わんよ」

長老の許しを得て、クラウスはアメリアの隣に腰かけた。

プツプツとボタンを外す音の後、するりと白いシャツがアメリアの体から離れていき、白い肩が見えたかと思うと続いて背中が現れた。

アメリアのそばに座っているクラウスは極力彼女の肌を見ないようにと視線をそらしていたが、肩から背中にかけて大きく伸びる傷跡が目の端に映った。

思わずその傷跡を目に入れたクラウスは、紳士たれの矜持を束の間忘れてしまったのか、まじまじと彼女の体に残る傷を見つめた。

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