第17章 転換
もし2人の間に何かしら繋がりがあるのなら、きっとその証拠となるものが何かあるはず。
同じ血を使う力を持った者同士、仲間ではなくとも互いの情報を持っていてもおかしくはない。
リアはどうにかしてザップから話を聞き出そうとまた口を開きかけた時、玄関のドアが乱暴に叩かれた。
「いっ⁈ まさかアイツか? おいリアーナ、ちょっと隠れてろ‼︎」
言ってザップはリアをクローゼットの中に押し込めた。
物音を立てるなよ、と言い残してザップは玄関の方へ足早に向かって行く。
ガチャリと玄関が開いた音がしたかと思うと、すぐに女のわめき声が部屋中に響いた。
「今度は誰連れ込んでんのよ⁈」
「落ち着けってトレイシー、俺1人だって」
「そうやってまた嘘ついてあたし騙そうたってそうはいかないんだから‼︎」
「嘘じゃねーって。なぁトレイシー、俺ぁ腹減ってんだ。今から飯でも行かねぇか? 最近出来たいい店があるんだ」
「またあたしに奢らせる気?」
「んなワケねーだろ、ちゃんと俺が奢るっつーの」
ザップとトレイシーの大声の会話は、クローゼットの中のリアの耳にもしっかりと聞こえてきた。
どうやらザップはリアの他にも粉をかけている女がいるようだ。
初対面でナンパをしてきたくらいの男だ、他に何人も女がいるのは分かり切ったことだった。
女同士が鉢合わせするのも初めてではないのだろう。
慌てつつもリアが部屋にいる事をトレイシーに気づかせないあたり、こういった事態に慣れている証拠だ。
遊び慣れている軟派な男だから、隙をつくのも簡単だとリアは思っていた。
けれど、実際はザップは意外に強かな男だった。
何も考えてないフリをして、肝心なところでのらりくらりとはぐらかす。
リアの企みなど、とっくの昔に気づいているのかもしれない。
しかしもしそうだとしても、リアはここで引くわけにはいかなかった。
ザップ達は食事に行く様子だった。
あのままザップがトレイシーとうまくやっていれば、すぐには部屋に誰かが来ることはないだろう。