第16章 Virgin Mary of Hersalem's Lot
疑問符を浮かべるクラウスなどお構いなしに、K・Kは一人盛り上がっている。
「相談にはいつでものるから、クラっち。遠慮なく相談してね」
「?? あ、ああ……」
浮かれたK・Kの妙なテンションに若干引きつつも、クラウスは頷くより他なかった。
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窓の外はすっかり暗くなってしまっていた。
アメリアと再会を果たした子供達はそれぞれミス・エステヴェスによる診察を受け、一日を終えようとしていた。
特に異常のある子どもは見受けられず、翌日には子供達は保護施設へ移されることが決まった。
もちろんアメリアも共にその保護施設へ行くものだと思っていた子供達であったが、彼女はまだ入院するという話を聞いて、子供達は一様に困惑と心配の色を浮かべた。
子供達の中でも、特にハンナは、ようやく会えたアメリアと離れるのが嫌なのか、就寝の時間になっても彼女から離れようとしなかった。
「ハンナ、お休みの時間よ」
ぎゅうと体にしがみついて離れないハンナの頭をなで、アメリアはハンナに囁いた。
ハンナはふるふると首を振って、ぐっと唇をかみしめ眉間には皺を寄せている。
「……いや。眠ったら、朝になっちゃう。そしたら、アメリアと離れ離れじゃない」
「きっと、ほんの少しの間よ。施設には会いに行くから。ずっと離れ離れになるわけじゃないわ」
「……怖いの。また、あの日みたいに突然いなくなっちゃうんじゃないかって。アメリアも、イアンも、リアも。何も言わないで消えちゃった、あの日みたいに」
「ハンナ……」
ますますぎゅうっとアメリアの体を掴むハンナの手に力が入る。
それに応えるように、アメリアもハンナの体を抱きしめた。
突然、教会を飛び出して。
訳も分からないまま、外の世界に逃げ出した子供達。
何かに縋らなければ立っていられないのはアメリアも同じで、幼いハンナにとってみれば、アメリア以上に何かに、誰かに頼らなければ不安で堪らないのだろう。
何も知らない。何も分からない。
そんな中でアメリアは、ハンナにとって暗闇に浮かぶ灯台のような存在なのだ。
行き先を指し示してくれる灯りのように、ハンナにとって無くてはならないものだった。