第16章 Virgin Mary of Hersalem's Lot
「……っ、」
“性的興奮”を与える役目はクラウスのものであるはずなのに、気が付けばクラウスはアメリアに煽られていた。
それは今回に限った話ではなかった。
アメリアを気持ちよくさせようと思えば思うほど、クラウスもまた気が昂るのを抑えられなくなっていた。
(──この香りは、何だったか……)
口付けが激しくなっていくほどに、クラウスの鼻腔をくすぐる香りも強くなっていく。
その香りはどうやら、アメリアの体から香っているようだった。
初めて口づけを交わした時も、この香りは漂っていた。
口付けを交わす回数が増えるごとに、その香りは強くなっているような気がする。
甘い花のような香りは、どこかでかいだことのある香りだったが、クラウスはそれが何だったかは思い出せなかった。
ただ、その香りが強くなるにつれて、クラウスは自身を抑えるのが難しくなっていった。
口づけ以上に、アメリアの柔らかな肌に触れ、吸い付き、かぶりつきたいという欲求に駆られそうになる。
アメリアは、教会で一番の人気を誇っていたらしい。ダニエル・ロウ警部補の報告の中でそんな話があった。
それはもしかしたら、この彼女の香りに秘密があるのかもしれない──そうクラウスが考えるほどに、アメリアの体から溢れ出る花の香りは男を惑わせるものだった。
抗えない何かが、クラウスの体を動かす。
ぐ、と体に力が入り、クラウスはゆっくりとベッドに沈み込んでいく。
クラウスの体重はそのままアメリアの体をベッドに押し倒し、二人は重なるようにピタリと密着した。
唇は重なったまま、クラウスの手は自然とアメリアの胸元に向かい始めていた。
そうっと病衣の上から触れた膨らみは、下着を身に着けていないからかクラウスが思うよりも柔らかく、あたたかかった。
「んっ……」
アメリアの口から甘い声が漏れ出て、クラウスはそこでハッと我に返った。
「っ、すまない!」
勢いよく体を起こしたクラウスはそのまま立ち上がってアメリアから距離を取る。
クラウスはまともにアメリアの顔を見られなかった。
(私は、何ということをしようとしていたのか……!)
自分の行いを振り返り、クラウスはふるふると首を振る。