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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第16章 Virgin Mary of Hersalem's Lot



「私とこんなに仲良しなのよ。ハンナもすぐに仲良くなれるわ」

にっこり微笑むアメリアにつられ、クラウスも笑顔を浮かべてみせた。

しかしそれがあだになったのか、ハンナは怯えてまたアメリアの体に顔をうずめて隠れてしまった。

「……すまない、怖がらせてしまったようだ」

そう言ってクラウスは項垂れた。


彼は、今までにも笑顔を浮かべると怖がられるという経験を何度もしてきている。

クラウスにとっては最高の笑顔を浮かべているつもりなのだが、傍から見るとその笑顔ほど怖いものはないようで、大抵の場合笑顔を見せられた側は恐怖心を抱く。

顔が怖いとクラウスも自覚はしているものの、やはり自分の精一杯の笑顔を怖がられてしまうというのはショックな事であった。

「ハンナ、ミスタ・クラウスはね、私の命の恩人なの。一度だけでなく、何度も命を救って下さったの。決して私達を傷つけたりなさらない方よ。大丈夫、ここは安全だから。もう怖い思いをしなくていいの。私達を傷つける人はいないわ」

「……本当?」

「ええ。お話すればすぐに分かるわ。ミスタ・クラウスも、他の方々も優しく素敵な方だって」

「……」

アメリアの穏やかな声に少し気を許したのか、ハンナはおそるおそるクラウスの顔を見て、そっとその手に触れた。

「!」

驚いたクラウスは思い切り目を見開き、それがまた怖かったのか、ハンナはまたアメリアの体に隠れてしまった。

一瞬ではあったが、ハンナが自分に心を開こうとしてくれたことに、クラウスは非常に感激していた。
じん、と感動に浸るクラウスの姿を、K・Kはじめライブラメンバーは戸惑いがちに見つめている。

「…アメリア、イアンとリアはどこにいったの? 一緒にここにいないの?」

アメリアを取り巻いていた一人の子供が尋ねると、他の子供達も心配そうにアメリアに視線を送る。

アメリアは顔を曇らせて、静かに首を振った。

「……ここにはいないわ。みんなはイアンとリアがどこに行ったか知らないのね?」

「知らない。二人とも黙って出て行っちゃったから」

「そうなの……」

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