第16章 Virgin Mary of Hersalem's Lot
「子供達を見つけて欲しかったのかしら」
「同じ境遇を生き抜いてきた仲間だからな。そのくらいの情は持った人物だという事だろう」
術師を操っているイアンという少年は、アメリアの兄という話だった。
ダイナーで対峙した時の彼の印象は、決して良いものではなかったが、その奥底の人柄まではあの短い時間では測ることは出来ない。
目の前で子供達に囲まれているアメリアの兄だ。多少なりとも彼女のような優しさを持っていてもおかしくはないだろう。クラウスはそう考えていた。
ライブラメンバーがそんな会話をしている間に、子供達の関心は、アメリアから背後のライブラメンバー達に移行してしたようで、視線を感じたクラウスが子供達に目をやった。
アメリアの体から半分だけ顔を出した小さな女の子──ハンナと目が合う。
瞬間、ハンナはガバッとアメリアの体にしがみつき、泣き出してしまった。
「どうしたの、ハンナ」
アメリアの言葉に、ハンナは小さな声で何事か囁いた。
その囁きを耳にして、アメリアはそっと背後を振り返る。
背後にはこちらをじっと見ているクラウスの姿があった。
きっと、見知らぬ男性に怯えたに違いない。
決して子供達を傷つけることはしないし、むしろ逆に助けてくれる存在だったが、何も事情を知らないハンナからすれば、見たこともない大男に怯えてしまうのは仕方のないことだった。
クラウスは2メートルを越える長身で、恰幅もいい。
彼がその場に立っているだけでも、異様な迫力がある。
そして何より顔が怖い。
小さな体のハンナからすれば、クラウスがただ見つめているだけでも、相当な威圧感と恐怖感を味わっていた。
「大丈夫よ、ミスタ・クラウスはとっても優しい方だから。怖くないわ」
アメリアの言葉に、自分が知らずのうちに子供達を委縮させていたのだと気付いたクラウスは、出来るだけ怖がらせないようにと、ハンナの目線の高さに合わせるようにその場にしゃがみこんだ。
「ほら、見て」
アメリアはおもむろにクラウスの手をとって、握りしめた。
突然の行動に、クラウスは彼女にされるがままだ。