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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第16章 Virgin Mary of Hersalem's Lot



ハンナはゆっくりと顔をあげ、泣き顔のままアメリアを見上げる。
そんなハンナを愛おしそうにぎゅっと抱きしめるアメリアの後ろ姿を、クラウスとツェッドは微笑ましく思って眺めていた。

「やっと緊張が解けたみたいね」

「そうですね。ここまで誰も口聞いてくれませんでしたもんね」

「ピーピー泣かれるよかマシだったけどな」

病室にはクラウス達の他にも、3人のライブラメンバーの姿があった。

子供達の保護に向かった彼らに、クラウスは労いの言葉をかけた。

「K・K、レオナルド君、そしてザップ。ご苦労だった」

「私今回は特に何もしてないわよ? ただ見守ってただけ」

K・Kと呼ばれた長身の女性がクラウスに答える。

彼女は凄腕のスナイパーで、普段のライブラの活動においては後方支援を主に担当している。
今回は子持ちという点を買われて、子供達の救出に駆り出されていた。

「K・Kさんがいてくれて助かりましたよ。僕達だけじゃここまで連れてこられたかどうか」

「そう? 大人しい子達ばかりじゃない」

K・Kの左目がアメリアの周りに固まっている子供達に向く。
先ほどまでの硬い表情を浮かべている子供は一人もいない。
皆、アメリアに会えたことで安心したのか柔らかな表情をしていた。

「あの場にいたのはこれで全員だろうか?」

「はい。他に人はいませんでした」

クラウスの問いに、レオナルドが頷く。

「術師を操ってるヤツはあの中にはいねーっすわ」

ザップが言いながら、顎で子供達を指し示した。

子供達を見回してみても、イアンやダイナーにいたもう一人の少女の姿はなかった。

ここにいるのは、何の力も持たない、普通の──恐らくアメリアと同じようにクローンではあるだろうが──子供達だけだ。

「旦那に言われて捜索した部屋、幻術かかってなかったんスよ。フツーに俺らにも認識出来たんで。あの中に術師がいるってんなら、この状況で術解くとは考えられねーし」

「ふむ……すでにどこかに逃げてしまったという事か。意図的にあの部屋の術を解いて出て行ったのかもしれんな」

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