第14章 尋問の時間
「…仕方ない。他の観点から元締めを探ろう」
「お役に立てず、申し訳ありません」
「いや、謝る必要はない。君の兄の力や目的が分かっただけでも随分な進歩だ」
ミスタ・スターフェイズの言葉に、ロウ警部も頷く。
決定的な証拠も何も示すことは出来なかったけれど、多少は力になれたのだろうか。
お二人にそう言ってもらえると、少しホッとする。
けれど、話はまだ終わりではなさそうだった。
他に何か、聞かれるようなことがあっただろうかと考えてみたけれど、すぐには思いつかなかった。
「さて……アンタの周囲の事についてはあらかた話を聞いてきたが……肝心の、アンタ自身の事についても教えてもらおうか」
「私の事、ですか?」
ロウ警部の言葉に、思わず首をかしげてしまう。
質問の意図が分からなかった。
昨日、あらかた自分の事は話したつもりだったのに、再度自己紹介をしろと仰るのだろうか。
昨日お話しした事以上に、私自身の事で話すことはないのだけれど……。
「……君は、自分をアメリア・サンチェスと名乗っているが……調べたところ同姓同名の少女は3年前、10歳でこの世を去っているのだ」
ミスタ・クラウスの言葉に、驚きを隠せなかった。
自分と同じ名の少女が、3年前に亡くなっている。
偶然、同姓同名だったのだろうけれど、なんとも気味の悪い話だ。
「そう、仰られても……私は、アメリア・サンチェスです」
困惑する私に、ロウ警部が質問を始めた。
「生まれは?」
「ニューヨーク……今は、ヘルサレムズ・ロットですけれど」
ミスタ・ロウは手元の資料と私の顔を交互に見やる。
何の資料だろうか。
「両親の名前は?」
「……父は、アントニオ。母はジャンナです」
「他に家族は?」
「兄が一人。名前はイアンです」
「……確かに、記録とも一致する」
ミスタ・ロウは私の発言と手元の資料をひとつひとつ照らし合わせ、ミスタ・クラウス達に視線を送った。