第13章 痕跡
これは言外に『どこにいるか分からないが街中捜索してなんとしてでも見つけ出せ』というスティーブンの思いが込められた笑みだと、レオナルドは本能で瞬時に理解した。
「分かりましたよぉ……あ、スティーブンさん。ひとつ気になったことがあるんですけど」
「何だ」
「独特の光り方、って俺言いましたよね。あんな光り方してるの初めて見たんですけど、オーラが二つ重なったような光り方をしてるんです。光り方に差はあれど、普通オーラの色って一人一つなんです」
「……それはどう解釈すべきかな。一つの体を二つの者が共有しているという事か?」
「一人のオーラに他の何かがくっついているような……よく分かりませんが、オーラが二つ混在してるような感じなんです」
「僕が見た時は普通の少年に見えたが……義眼保有者の君がそう見えたのなら何かワケがあるんだろう。ありがとう、その情報は頭に入れておくよ」
少年の姿を追う事は出来なかったが、その気配をレオナルドが察知できるようになったのは大きな前進だった。
「おそらく、ミス・アメリアの仲間には幻術を使うヤツがいる。だが少年、君の眼ならそれすらも見破ることが出来る。君には大いに期待しているぞ」
「は、はぁ……全力を尽くします」
どこにいるかも全く分からない相手をオーラだけで探せとは無茶ブリもいいところだったが、それを口にするだけ時間の無駄だとレオナルドは分かっていた。
言ったところでスティーブンはまたあの笑顔を見せるだけだろう。
一体どこから探し始めればよいのか……途方に暮れそうなレオナルドをよそに、スティーブンは他の方面から少年の後を追えないかとその方法を探り始めていた。
*********
─隠れ家─
隠れ家にたどり着くなり、イアンは椅子に倒れこむように腰かけた。
激しく頭を打ち付けながらも、異界人を操り幻術をかけつつ逃走を図ったからか、イアンは相当に疲れているようだった。
リアはすぐさまイアンの額の怪我の手当てに取り掛かった。
「追っ手はかからなかったようだけど……やっぱりあの子を操っておくべきだったんじゃない?」
この作戦をイアンから持ち掛けられた際、リアは一貫して『アメリアを操るべきだ』とイアンに主張し続けた。
けれどイアンはそれは本当に最後の手段だと、頑なに首を立てに振らなかった。