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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第2章 ヘルサレムズ・ロットの日常



迷いに迷って新商品のサンドイッチのうち、禍々しい赤色の具材が挟まった方を選び取ろうとしたレオナルドは、次の瞬間にはサンドイッチに手を伸ばした体勢のまま、勢いよく吹っ飛ばされていた。


「い、痛い……。ひっ!?危なっ!!」


吹っ飛ばされたレオナルドを心配する者は皆無だった。
コンビニの店内にいた者は一様に、レジ前へと殺到している。
レオナルドを吹っ飛ばした者も、他の者と同様、わぁわぁと騒ぎの中に突っ込んでいる。


吹っ飛ばされた体制のまま床に転がっていたレオナルドは、レジに突進するまた他の大きな異界人に踏みつぶされそうになった。


「一体何が…?!」

騒然とする店内。
事態を把握しようと、レオナルドは人々が群がるレジの方へ意識を向けた。


「どうぞー!! どうぞお持ちくださーい!!」


その声と同時に、宙へたくさんのお札が舞うのが見えた。


「今日は大盤振る舞いしちゃいますよー!」


朗らかな店員の声が響く。

人だかりでレジの様子はよく分からないが、どうもレジにあるお金を店員がばら撒いているようだった。


「は……? なんだあれ……」


日常的に超常現象が起こる街とはいえ。
コンビニの店員が突然レジの金をばら撒きだすなんて、おかしい。


外界とは一線を画すこの街の日常に慣れてきたレオナルドでも、さすがにこの光景には違和感を覚えずにはいられなかった。


「つかザップさん?! あんた何してんすか!」


金が無いとは言っていたが。
ザップの指先からは幾つもの赤い線が飛び出して、宙に舞うお札をキャッチしていた。


──必殺能力をあんな事に使って。

レオナルドは呆れながらも、以前にも道端のコインを特殊能力でザップが拾い上げるのを目撃したことを思い出していた。


ザップは、自身の血液を変幻自在に操る能力をもっている。

この特殊な能力を持っているのは、ザップ以外にも存在し、彼らの所属するライブラの中でも多数存在している。


「あ゛ー?うっせ! くれるつっーんだからありがたくもらってんじゃねーか」


言いながらザップは他の客が手にしたお札まで奪い取り、下卑た笑みを浮かべていた。


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