第13章 痕跡
「僕は少年を連れてダイナーに行ってくる。彼女と一緒にいた子達の痕跡を追うとしよう。彼女については、クラウス、君とミス・エステヴェスに任せる。ああ、ツェッドはここで待機してもらえるか」
「分かりました」
ツェッドにそう指示を出し、スティーブンは黒髪の少年─レオナルドを連れて病室を出て行った。
「……ミスタ・クラウスのお近くには不思議なお力を持った方ばかりいらっしゃるのですね」
アメリアはレオナルド達の背中を見送りながら、呟いた。
そしてゆっくりと視線をクラウスと隣に立っているツェッドに移した。
「初めまして、アメリア・サンチェスと申します」
ベッドの上で丁寧に頭を下げるアメリアに、ツェッドは慌ててお辞儀を返した。
「ツェッド・オブライエンです」
「ミス・アメリア、しばらくの間、私やツェッドが君のそばにつく。監視されているようで気分は良くないだろうが、了承願いたい」
「分かりました。……監視されても仕方ない状況だと、理解しています。お気遣いありがとうございます、ミスタ・クラウス」
要警戒監視対象者とは思えないほど穏やかに話すアメリアに、ツェッドは面食らっていた。
スティーブンからは、目的も能力も出自も、不明な点が多い為気を付けるようにと事前に説明をされていたものの、実際に対面したアメリアはとても危険人物には見えなかった。
ごく普通の、話し方の丁寧な少女にしか見えない。
「ツェッド、すまないがここを頼めるだろうか。少し、ギルベルトの様子を見てきたい」
「ええ、分かりました。ギルベルトさんによろしくお伝えください」
「ああ。では頼んだ」
クラウスが病室を出て行き、ツェッドに早くもアメリアと二人きりの状態が訪れた。
監視対象とはいえ、初対面の少女と二人きりで部屋に残されるのは、ツェッドにとって少々居心地の悪い状況だった。
間が持てないというのだろうか。
何か無理に話をしなければならないわけではないが、ただじっと少女を見つめているだけでは何となく気持ちが落ち着かない。