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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第12章 対価



現実的な打開策を提案されて、ホッとした。

それはミスタ・クラウスも同じだったようで、胸をなでおろしていた。

また一人、ミス・エステヴェスがやってきて、点滴の準備を始める。
もう一人のミス・エステヴェスは、痛み止めの注射を打ってくださった。

「しばらく、うちに入院してもらうわ。明日からカウンセリングを始めましょう」

「はい。よろしくお願いします」

「ミスタ・クラウス、ミスタ・ギルベルトの事でお話が。少しよろしいですか」

「ええ」

お二人は連れ立って病室を出て行かれた。

ぽつんと一人部屋に残された私は、天井を見上げることしかすることがなかった。

これからどうなるのだろう。

兄さんは、リアは、どこへいったのだろうか。

他の子供達も、無事でいるだろうか。

考えても何も解決できないけれど、頭の中はみんなの事でいっぱいだった。



*****************


「ギルベルトに何かあったのだろうか」

クラウスは心配そうにルシアナに尋ねた。

ブラッドベリに来てから、まだギルベルトの顔を見ていない。
先日見舞いに行った際には元気そうな顔をしていたが、容体が急変でもしたのだろうか。

不安そうなクラウスの顔に、ルシアナはバツが悪そうな表情を浮かべた。

「いえ、お元気よ。順調に回復なさってます。ごめんなさい、あの子の前で話すのもどうかと思ったから」

ルシアナの気遣いに気づき、クラウスはそうでしたか、と小さく答えた。
ルシアナはアメリアの事で他に話したい事があったらしい。本人には聞かせたく無い内容の話が。


アメリアの病室から離れた場所で、ルシアナは立ち止った。


「しばらくは点滴でしのげるけれど、ずっと点滴に頼るわけにはいかないわ。最低2週間、持っても数か月。その間にカウンセリングがうまくいけばいいけれど、確証はない」

「何か、他に手はないものだろうか……」

「人体改造以外に?」

冗談めいて言ったルシアナに、クラウスは至極真面目な顔で返答する。

「ああ」

「……無い、ことも無いけれど……うまくいくかは分からないわ」

「何だろうか。方法があるのなら試さなければ」

自信なさげなルシアナに、クラウスは急くようにその方法を尋ねた。


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