第11章 急接近
会話を終えたクラウスに、スティーブンが勢いよく詰め寄る。
「おい、クラウス、今の電話」
「ああ、ミス・アメリアからだった。聞いていたと思うが、明日の10時にダイアンズダイナーで会う事になった」
スティーブンの眉間に深く皺が刻まれていく。
アメリアから連絡があり、それに直接会う約束も取り付けた。
だというのに、スティーブンの心情は穏やかなものではなさそうだった。
「……罠だな」
「罠?」
クラウスはアメリアが何の裏の考えも無しに連絡を取ってきたと思っているのか、一瞬考えるような目になった。
人の良いリーダーの思考に、スティーブンはしっかりしてくれと頭を抱えた。
「だってタイミング良すぎるだろう?! 僕たちが必死に探しても見つからなかった子が、いきなり向こうから連絡を取って来たんだぞ?!」
「うむ。だが、彼女に会って話を聞けるのなら罠だろうと飛び込むべきだろう」
「それはそうだが……まぁいい。ミス・アメリア自身か、その後ろに誰か黒幕がいるのか知らないが、僕たちを嵌めようとした事を後悔させてやるさ」
スティーブンは不敵な笑みを浮かべていた。
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翌日。
ダイアンズダイナーは朝から賑わっていた。
このダイアンズダイナーは看板娘のビビアンとその父親が店主をつとめる店である。
普段から客入りはそこそこ多く、ライブラメンバーのレオナルドやザップ達も頻繁に出入りしている。
「なんだろうね、今日はやけにお客が多いや」
ビビアンは厨房に立つ父親に話すともなく呟いた。
父親はちらりと店内を見やっただけで、特に何を言うでもなく注文を受けた物を黙々と作り続ける。
父親の作ったサンドイッチとコーヒー、それとオレンジジュースをトレーに乗せ、注文を受けたお客の元へビビアンが運んでいく。
「お待ちどうさま」
「ありがとうございます」
「君達、見かけない顔だね? 観光?」
ボックス席に向かい合いではなく、隣り合って座っている2人の少年少女に興味を引かれたからか、ビビアンはお客の2人に話しかけていた。
「最近、越してきて」
少年の方が口を開く。
少女はにこっと微笑んで少年の言葉に頷くだけだった。
「そうなんだ。うちの店、贔屓にしてくれよ」