第11章 急接近
「うむ。由々しき問題だ。早急にクローン製造施設と組織を叩かねばなるまい」
「警部がいくつか目星をつけた施設があるそうだ」
「ならばその施設に……すまない、電話だ」
存在を主張するかのように震える携帯を取り出したクラウスは、ディスプレイに映し出された“非通知”の表示に一瞬目を止めたものの、迷うことなく通話ボタンを押した。
「──クラウス・V・ラインヘルツだ」
『ミスタ・クラウス? 良かった、今度こそ繋がったわ』
電話の向こうからは弾んだ声がする。
若い、女性の声だ。
聞き覚えのあるその声に、クラウスは記憶の中からその声の主を辿った。
「……ミス、アメリア……?」
呟いた名前に、目の前のスティーブンの目がみるみるうちに開かれていく。
まさか、本人から連絡があるとは。
クラウスもスティーブンも予想もしていなかった展開だった。
『はい、そうです。アメリアです。あの、ミスタ・クラウス』
「今、どこに?! 怪我は?!」
アメリア本人からの電話だと確定し、思わずクラウスの声が大きくなった。
『えっ? 怪我はないです……場所は、その、お伝え出来ないのですが……』
「ずっと君を探していた」
『そう、なのですか……そうですよね、私、突然いなくなったりして……』
「無事ならばそれでいい。…ただ、あの時の話の続きを聞かせていただきたい。出来れば直接会って話がしたいのだが、会えるかね」
『ええ、それはもちろん。私も会ってお話がしたいと思っておりました。……それに、ミスタ・クラウスに会っていただきたい人がいるのです』
「承知した。今すぐにでも構わないだろうか」
『……今すぐって、仰って……え? 明日? ええ、分かったわ』
アメリアは電話の向こうで誰かと話をしている様子だった。
彼女はどうやら一人ではないらしい。
会わせたい人物がいると言っていたから、その人物と共にいるのだろうか。
「ミス、アメリア?」
『申し訳ありません、ミスタ・クラウス。明日、10時にお会いできますか?』
「ああ、大丈夫だ」
『場所は……“ダイアンズダイナー”はご存知ですか?』
「うむ、知っている。では明日、10時にダイアンズダイナーでお会いしよう」
『ありがとうございます。それでは、明日』
「ああ」