第11章 急接近
「随分、心境が変わったのね?」
率直にそう尋ねると、兄さんはゆっくりと目を伏せた。
まるで神様への懺悔のように、目を伏せたまま兄さんは胸の内を語り始めた。
「…アメリアの話を聞いてよく考えてみたんだ、自分のやった事と、ミスタ・クラウスの事。彼は何度もアメリアの事を救ってくれたというのに、僕は、復讐に囚われて彼の運転手を殺してしまった。
運転手だけじゃない、無関係の人々も巻き込んでしまった……怒りで我を忘れていたとはいえ、自分はなんて恐ろしいことをしたんだろうと、ゾッとしたよ」
ミスタ・ギルベルトが亡くなったあの事件の日から、すでに1週間が経っていた。
それから私は隠れ家から一歩も外に出ることなく、今に至る。
このまま一生隠れて過ごすことは出来ない。
それは兄さんも同じ。
兄さんが悔い改めようとするのなら、私は喜んでその力になろうと思う。
兄さんが謝罪したところで、亡くなった人々は帰ってこないし、周囲の人々の心の傷もそう簡単に癒えはしない。
けれど、これ以上の過ちを犯さないために。
「もちろん、警察に自首もしようと思う。けれど、その前に。どうしてもミスタ・クラウスに直接会って話がしたいんだ。だからアメリア。協力してくれないか」
「分かったわ。私に出来ることなら、なんだって力になるわ」
「ありがとう、アメリア……」
兄さんがそっと私を抱きしめる。
微かに震える兄さんの背中を、ゆっくりとさすった。
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─ライブラ事務所─
「クローンか……なるほど、それならば納得がいく点が多いな」
「だろう」
事務所に呼び戻したクラウスに、スティーブンはダニエルとの会話で判明した事のあらましを伝えた。
「ミス・アメリアは3年前10歳で亡くなっている。その彼女が生きていても今は13歳のはずだからな。私の会ったミス・アメリアとの年齢差が気になっていたのだが……クローンであるならばある程度説明はつく」
「オリジナルの遺伝子を操作して年齢を上げて造ったというところか」
「おそらく。……操作したのが年齢だけならいいのだが」
「分からんな。彼女がテレポーターだとすれば何らかの能力を付与する実験も行われていたかもしれん」