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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第11章 急接近



スティーブンの脳がフル回転する中、ダニエルはまたひとつ、重要な情報をよこした。

『それとな。アメリアの死亡は確実だ。当時の司法解剖の報告書も残っている。現場の写真から遺体も確認した。だが、妙なんだ』

「妙、とは」

『念のために墓場を調べたんだが、棺の中は空っぽだった。骨の欠片ひとつすらねぇ』

「火葬でもして遺骨は他の場所にやったんじゃないのか」

『いや、母親の話だと土葬だったと』

「……誰かが、遺体を持ち去った?」

そこまで口にすると、スティーブンの脳裏にあるひとつの仮説が浮かび上がってきた。


死んだはずの少女が生きている謎。

消えた遺体。

生んだ覚えのない子供。


それらを結び付けて見えてきたのは──……。


「クローン、か」

『あんたもそう思うか』

「この街じゃ荒唐無稽な話でも無いからな」

『ったく、とんでもないヤマを引き当てちまったかもなアンタのボスは』

「かもしれないな」


誰が何の目的で。

アメリアのクローンを作ったのか。

また謎は増えてしまったが、少女の謎に一歩近づいた。


「クローンを作れるような設備の整った施設か……」

『いくつか目星はつけてある。少女探しと並行してやってくれるか』

「ああ、分かった」

『だが教会の件も忘れるんじゃねぇぞ』

「分かってるよ」




ダニエルとの会話が終わると、スティーブンは早速クラウスに連絡を取った。

「クラウス。ミス・アメリアの件で進展があった」





****************


─隠れ家─


「えっ……? ミスタ・クラウスに……?」

「そう。会ってきちんとお詫びとお礼を言いたいんだ」


私は兄さんの言葉に驚いていた。

ミスタ・クラウスの事をおかしなヤツだと言っていたあの兄さんが、彼に会いたいと話してきた。

どういう心境の変化があったのか分からないけど、兄さんが前の兄さんに戻ったような気がして嬉しかった。

前の優しい兄さんに。

けれど、あんなに復讐に燃えていた兄さんが、突然そんな事を言い出したものだから、少し引っかかるところはある。

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