第11章 急接近
「ちょっと待て、俺はまだあの娘の名前を聞いてねーんだ!!」
「しつこすぎる男は嫌われますよ」
「おい、半魚人!! ほどけ!! ほどきやがれこの野郎!!」
「もうブリーフィング始まるんですから。このまま連れて行きます。貴方にも、ご迷惑おかけしました」
礼儀正しく異界人は私に頭を下げ、ズルズルと男を引きずって行ってしまった。
「変な人達……」
ザップ、それにあの魚人だの半魚人だのと呼ばれていた異界人。
二人とも自分の血を操る能力を持っていた。
「あ……もしかして、仲間だった……?」
あの、クラウスって男と。
同じ血を操る者同士、もしかしたら繋がりがあるかもしれない。
しまった。
イアンに何か情報を持って帰れたかもしれないのに。
私は急いでさっきの人達の後を追った。
幸い、角を曲がってすぐ彼らの姿を見つける事が出来た。
ザップはいまだに異界人にぐるぐる巻きのまま引きずられていた。
目があったザップが飛び跳ねんばかりの勢いで、こちらに手を振り始めた。
「ザップ!! 私、リアーナ!! また会いましょう!」
「リアーナ!! 俺はいつでも君に会いに行くぜ!!」
「待ってるわ」
私とザップのやり取りに、魚類の異界人は驚いた顔でこちらを振り返った。
待ってるわ、ザップ。
あなたの知ってる事、私に教えてちょうだい。
街角に消えていく彼らの姿を、笑顔で見送った。
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─ライブラ事務所─
事務所では、スティーブンがいつものようにパソコンと睨み合いを続けていた。
消えたミス・アメリアの行方を捜し始めて1週間が経過していた。
クラウスが先頭に立ち、人海戦術で街中を探しているものの、少女の行方は依然として知れなかった。
警察も少女の行方を追っている、ライブラもメンバーを増員して探しているというのにひとつも情報が上がってこないことに、スティーブンは頭を痛めていた。
もしかしたら、少女はテレポーターかもしれないという話だったから、あちこちテレポートしているのかもしれない。
そうなると見つけ出すのは難しい。
少女が自分の意志で逃げているのだったら、なおさらだ。