第1章 現実に生きる君へ
問題は部活だ。
俺は卓球なんざ出来るわけがねぇ。
「かっちゃん、無理して部活しなくていいんだよ?だって、卓球知らないでしょ?」
「知らねぇよ!」
幸い綾香と同じ部活だったから良かったと思うが、周りから異様な目線が突き刺さる。
「零、どうしたの?」
同じ部活の奴らが心配そうな顔で見る。
こんな俺が居たらおかしいよな。
「だから俺は爆豪勝己だ。この女と体が入れ替わっちまった」
なるべくコイツに似せるように冷静を保とうとする。
「はぁ!?」
その反応は無理もねぇ。
突然、人が変わったように暴れたら驚くだろうな。
卓球に挑戦してみようとするが、案の定、上手く打てるはずがなかった。
「ふざけんな!クソが!」
「かっちゃん……」
綾香は呆れた顔で俺を見ていた。
マジでムズい。コイツ、それなり努力したんだろうな。
俺はピンポン球を拾わされた。
俺は何も出来ねぇから仕方ねぇことだ。
部活が終わり、朝と同じ道を通った。
俺は想像以上に何も出来ねぇ奴かもな。