第10章 カミングアウト
私は出久に抱き付いて泣いていた。
出久は優しく撫でてくれる。
「たくさん泣いていいんだよ、僕もたくさん泣いて助けられてきたんだから」
私は声を上げて泣いていた。
今まで溜め込んできた苦しみが爆発して溢れ出している。
「中身がかっちゃんじゃないって分かっててもなんか嬉しいな……」
「出久はかっちゃんを嫌いならないの?」
「僕にとってかっちゃんは憧れの存在だから。零ちゃんもそうでしょ?憧れの存在であり、好きな人なんでしょ?」
「……うん」
私はそれでも彼が好きだったんだ。
どんなに笑われても嫌いになんかなれなかったんだ。
「かっちゃん、大丈夫かな……」
「かっちゃんなら大丈夫さ」
周りを見渡せば、オールマイトだらけだった。
出久も私もたくさんの小さなヒーローに出会って、今があるんだ。
かっちゃんも涼介先輩も、誰かに支えられて生きているんだろう。
「お風呂行こうか」
「イヤだ……」
「もう、我慢してよ」
出久に腕を引っ張られ、部屋の外に出た。