第12章 仕事仲間
高級感のある艷やかな輝きを放つマホガニーの大きなデスクで、書類仕事をしている金髪碧眼の大柄な男。
新鋭の芸能事務所であるスミスプロモーションの社長、エルヴィン・スミスだ。
……ふぅ。
根を詰めていたエルヴィンは万年筆を置いた。軽く息を吐き、首をコキコキと鳴らしていると、バーーーーン!とドアがひらいた。
「エルヴィンはいるか!? いたな!!」
「……ノックくらいしろと いつも言ってるだろう、ハンジ」
「あぁ そうだったね…って! そんなことはどうでもいいんだ!」
ミケがゆっくり入ってきて、後ろ手にドアを閉めた。
「リヴァイが… リヴァイが、ブ、ブ、ブ ブハハハハ!」
「落ち着け」
「これが落ち着いていられるかーい! あのリヴァイが… 女の子とブランコに乗ってたんだよ!」
「……リヴァイが ブランコ?」
エルヴィンはその光景を思い描こうとしたが、なかなか難しい。
「ハンジ、訳のわからんことを口走らず最初から話せ」
「うん わかった」
ハンジとミケは革張りのソファに腰をかけた。
「……リヴァイが最近ずっと様子が変なんだ。もうとっくにアルバムに入れる曲を幾つか書き上げていいころなのに、ため息ばっかりついちゃってさ」
「リヴァイは詞先(しせん)だからさ、言葉が浮かんでこないと先に一歩も進めないんだ。で、いつも降臨した言葉を紙に殴り書きしてさ、そこから歌詞書いて曲乗っけてくんだ」
「あまりに何も進まないから何日か前にミケと一緒にリヴァイん家に行ったんだ。酒でも飲もうって口実作ってね。で、ミケがリヴァイに酒を飲ませてる間に隙を見て、仕事部屋のシュレッダーからこれを拾ってきたよ。証拠物件Aだ!」
ハンジは どうだ!とばかりに、一枚の紙を鞄から取り出した。
それはシュレッダーで細断されたはずの紙を、見事に復元したものだった。
手に取ったエルヴィンが、そこに書かれた文字を読む。
そこには、いつものリヴァイの几帳面な文字より かなり乱れた様子で、マヤ マヤ マヤ マヤ マヤ マヤ と一面に「マヤ」があふれていた。
エルヴィンは思わず声が出た。
「なんだ、これは…」
「そうなんだよ! 私も これを見たときは鳥肌が立ったよ」