第11章 嫉妬
マヤは顔をキラキラさせながら、このベンチで食べたのに今の今まですっかり忘れてた、懐かしい~とかなんとかはしゃいでやがる。
……何が そんなに嬉しいんだ。
俺は沸々と怒りがこみ上げてきた。
ここは、俺とお前の二人の公園じゃねぇのか。
女なんて欲を吐き出すだけのものだった。会話なんて意味のない面倒なものだ。女の止め処ないおしゃべりを聞くなんぞ反吐が出る。
……それが、マヤだと違った。
お前の声をもっと聴きたい。話しながらクルクル変化する万華鏡のような表情をずっと見ていたい。
お前に欲がないと言えば嘘になる。
だが抱きたい気持ちと同時に、ただそばにいて慈しみたい気持ちも湧き上がる。
さっさと俺のモノにして抱きつぶしたい反面、壊しちまうのが怖い。
こんな気持ちは、今まで感じたことがなかった。
……この胸の痛みは、一体なんだ…。
想いを巡らす俺の耳に、マヤの声がまた聞こえてきた。
「クリームがたっぷりで すっごく美味しいんです。買い食いは禁止されてたから、余計に美味しかったのかなぁ? ほら背徳感ってやつで」
無邪気なマヤの笑顔。
イライラする。
俺とマヤが少しずつ思い出を紡いでいるこの公園で、有ろう事か他の男との思い出を 心底嬉しそうに語るマヤ。
ここは、俺とお前の二人のベンチじゃねぇのか。
少なくとも、俺はそう思っていた。
それなのにマヤよ、お前は あのジャンとかいう馬面のガキとの甘い思い出を俺に聞かせやがる。
……っざけんな!
気がつけば俺は、ベンチから立ち上がって駅に向かって歩き出していた。