第11章 嫉妬
「リヴァイさん、もしかして妬いてます?」
マヤにはリヴァイの青すじの立つ音が、ピキピキと聞こえてくる気がした。
「あ? 何を言ってる。そんな訳ねぇだろ」
「ですよね~。リヴァイさんはガキには興味ないですもんね!」
「……てめぇ、削ぐぞ」
いつもの公園まで来た二人は、中に入りベンチに座った。
「いい加減 機嫌直してくださいよ~」
「だから別に不機嫌でもなんでもねぇっつってんだろ」
「……いつも不機嫌といえば不機嫌だから、いつもどおりなのかもしれません」
……リヴァイさんがヤキモチを焼くとは思えないし、どうしてジャンのことで こんな不機嫌なのかよくわからない。何か誤解しているのかもしれないから一応説明しておこう。
「ジャンは中3のときに初めてつきあった人です。つきあったっていっても中学生だし、一緒に下校しただけです」
「だからなんだ」
「だって何か誤解してそうだし、ちゃんと説明しておこうと思って…」
「下校しただけです…か。美しい初恋ってやつだな」
「初恋?」
「なんだ、違うのか」
「うーん 初恋かといわれると、何か違うような…」
「………」
「ジャンに告白されたときも完全に想定外だったし、つきあってからも いまいちピンとこなかったというか…」
「そいつのこと 好きじゃなかったのか」
「好きでしたよ? ジャンと話すのは楽しかったし。でも…」
……でも今、リヴァイさんを好きな気持ちとは全然違います。
マヤはそうつづけたかったが、言葉にすることはできない。
「もっとデートとかしたら違ったかもしれませんね。一応受験だったし、ほんと一緒に帰るだけで…」
「……そうか」
「あ!」
「でけぇ声出すな」
「思い出した。一度だけデートじゃないけど学校帰りに初めて買い食いして、すごく楽しかった」
マヤは目を輝かした。
「駅前にシュークリーム屋さんがあるでしょう? 知ってます?」
「いや」
「そのお店、私が中3のときにできたんです。で、ジャンが一緒に食べようって言って、遠回りだけど買いにいって、あ!」
マヤは公園を見渡した。
「ここだった! ここで一緒に食べたの、このベンチで」
「あ?」
直りつつあったリヴァイの機嫌が再び悪くなったことに、マヤは全く気づかなかった。