第11章 嫉妬
マヤが、部屋に戻ってきた。
俺の放つ禍々しい空気に、困惑してやがる。
「中学のときの友達に会っちゃって…」
おずおずと切り出すマヤに、俺は苛立ちを隠せなかった。
「随分と楽しそうだったな」
「そうですか?」
……俺以外の男に 笑顔向けてんじゃねぇ。
「まぁ 一応元カレですし、気を使わないからそう見えたのかも」
「あ?」
……元カレ? モトカレ?
今 マヤには恋人はいないと聞いていたから、なんとなく今まで全く男とつきあったことがないものと決めつけていた。
マヤの醸し出す雰囲気も、純朴そうで男慣れしているとは言いがたい。
しかしマヤは俺の贔屓目なしで見ても、目鼻立ちの整った清楚な美人だ。笑うと、あどけない少女のようでとても可愛らしい。異性とつきあった経験がないと思う方がおかしいか。
……チッ、面白くねぇ。
俺は胸の奥底からドロドロと湧き出てくる不愉快な気持ちを持て余していた。
別にマヤが過去に、男とつきあっていようがいまいが関係ねぇじゃないか。
何故こんなにも気に障る。
……全く俺は、どうしちまったんだ。
……リヴァイさんは何を怒っているんだろう?
元々学習室に戻ってきたときから機嫌が悪そうで、眉間の皺も深かったけど、ジャンのことを話したら、ますます状況が悪化した気がする。
……そんな怒られるようなこと、したかな?
マヤが怪訝に思っていると、リヴァイが席を立ったので、慌てて荷物をまとめてあとを追った。
「待って!」
少しも歩調を緩めてくれないリヴァイに、マヤはやっと追いついた。
「リヴァイさん、何か怒ってます?」
少し肩で息をしているマヤを見て、リヴァイはゆっくり答えた。
「いや、別に怒ってねぇ」
「ふぅん…」
「なんだ」
「だって、絶対機嫌悪いですよ?」
「怒ってねぇって言ってんだろうが」
「……もしかして、ジャンのことですか?」
「ジャンってなんだ」
「元カレです」
……リヴァイさんのこめかみに青すじが立った!
マヤは、リヴァイの不機嫌の原因を確信した。