第11章 嫉妬
ジャンと私は そのまま肩を並べて歩き出す。会話の内容は他愛もないことばかりだ。クラスの子の噂話とか、当時デビューしたてだったKRH104の話題とか。
ジャンは、KRH104のミカサが好きだった。
「あの綺麗な黒髪! 女はやっぱ、黒髪だよな!」
「……だね」
私の髪はダークブラウンだ。黒髪じゃなくて悪かったわね という思いをこめて、いつもミカサの話題には冷たく返事していた。
「あ、いやぁ、焦げ茶だって可愛いぜ?」
「別に フォローしてくれなくていいから」
「ヤキモチ焼くなよ~」
「は? 誰が?」
そんなことを言い合いながら歩いていると、二人が別れる丁字路まで あっと言う間だった。
「じゃあ、明日ね」
「おぅ」
そんななんでもない日々が卒業までつづき、別々の高校に進学したことで自然消滅した。
卒業してから半年後、偶然道端で出くわしたジャンの隣には、真っ黒なストレートロングヘアの可愛い彼女がいた。
「ジャン、久しぶりだね!」
「おぅ、元気だったか?」
「うん」
誰?って言いたげにジャンの袖を引っ張る黒髪彼女に、ジャンは ぼそっと告げる。
「中学んときのクラスメイト」
私はジャンに、
「可愛い彼女ができたんだね、おめでとう!」
そう言って、じゃあねとその場を離れた。
次に会ったのは一年前。そのときも同じ黒髪彼女が べったりと引っついていた。そのときは何を話したかも覚えていない。
……そんなことを思い出しながら、卒業してから三度目に会うジャンをまじまじと見た。
少し背が伸びた?
私が155センチだから、175くらいあるんじゃない?
そう思いながら訊いてみる。
「もしかして まだ成長中? 背が伸びたみたいだけど」
「ん… どうだろ、測ってねぇから。でも そうかもな」
「ふぅん…」
「マヤは チビのまんまだな!」
「こらー!」
久しぶりに会ったマヤは、あのときと変わらない笑顔だ。ジャンは胸の奥にしまってあった記憶をたどり始めた。