第11章 嫉妬
一年ぶりくらいに見るジャンは、少し大人っぽくなっていた。
「ジャン、大人になったジャン?」
「おーい! それやめれ!」
「あははは」
中学2年 3年と同じクラスだったジャンは、いつも教室の中心でワーワー騒いでいて、クラスのムードメーカー的存在だった。サッカー部のエースで、男女区別なく誰とでも仲良く話す彼は人気者だった。
率先して男子と話さないマヤでも、ジャンとは くだらない冗談を言って笑い合えた。
そして…、全く異性として意識していなかった。
だから3年生の夏休み…、夏祭りの日の夜に神社の境内で ずっと好きだった… つきあってほしいと告白されたときは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていたのだと思う。
どう返事していいかわからずに口をパクパクしていた私に、ジャンが頭をかきながら困ったようにこう言ったのを 今でもはっきりと覚えている。
「マヤ、そんな顔すんなよ。いいんだ、伝えたかっただけだからよ。忘れてくれ…な?」
その顔が とても淋しそうで… 胸を締めつけられた私は、次の瞬間こう答えていた。
「いいよ」
「え?」
「……つきあってもいいよ、ジャン…」
「マジかよ…、よっしゃーーー!」
ジャンは子供のようにはしゃいで、神社の石段を二段抜かしで駆け下り、下で何か叫んだと思ったら、またすごい勢いで駆け上がってきた。
「オレ、マヤのこと大事にすっから!」
「う、うん…」
そうやって始まった二人だったけれど、つきあう前と それほど変わった何かがあった訳ではなかった。それまでどおりに冗談を言い合う仲の良い友達みたいな関係がつづいた。
唯一変わったといえば、一緒に下校するようになったことだろうか。
放送部だった私は下校放送を終えたあと、校門を出てしばらく行った先の電柱でジャンと待ち合わせしていた。私の時間は大きく変わることはなかったけれど、ジャンの方はサッカー部の練習の内容によって 結構時間がバラバラだった。待たされることの方が多かったと思う。
いつもジャンは走ってきて、
「お待たせ!」
と、白い歯を見せて笑った。