第10章 刺激
自身の住むタワーマンションに帰ってきたリヴァイは、エントランスで コンシェルジュに声をかけられた。
「アッカーマン様、お帰りなさいませ。お荷物をお預かりしております」
「ありがとう」
大きな荷物を受け取ったリヴァイは、エレベーターで最上階の39階にある自宅へ向かった。
部屋に入り荷物を置くと、キッチンに入った。冷蔵庫からキンキンに冷えたシュヴァルツビアを取り出すと、革のソファにドカッと座った。
瓶に口をつけ 一気に半分ほど飲み干す。
……はぁ…。
吐息混じりに左手を見る。
……まだ指に マヤの髪の感触が残っている。
艶のあるダークブラウンの長い髪は、ほのかに女らしい花の香気を放っていた。
一瞬ふれた頬はすべすべした肌ざわりで、俺の指を受け入れた。
大きな琥珀色の瞳を伏せると長いまつ毛が影を落とす。上品な鼻すじ、薔薇色に染まる頬。くちびるは紅をささずとも自然な赤みを帯び、みずみずしく濡れている。その赤い果実のような可愛い口から流れ出る声は、凜として涼やかだ。
白い華奢な首すじ。胸元は背丈の割には十分なふくらみで、俺を誘う。
……さわりてぇ。
マヤの姿を想うだけで、躰の中心に熱が集中するのを感じる。
……クソがっ! ガキなのは俺の方だ。
風呂に入るか…。
風呂で欲を処理したリヴァイだったが、マヤへの熱い思慕は募るばかりだ。
……マヤ…。
大きな琥珀色の瞳に みるみる溜まった涙。
……震えていたな…。そんなに嫌だったのか。
それに… 年齢差にも引いていた。
……俺は どうしたらいい。
こんな風に女のことで悩む日がくるなんて思いもしなかった。女なんて掃いて捨てるほど寄ってきやがって、その中から適当に清潔そうで美人で後腐れのないヤツを選ぶだけだった。
自分が女にどう思われるのかなんて考えたこともなかった。そんなことはクソどうでもよかった。
ところがどうだ。
俺は今 12歳も年下の女子高生に、嫌われているのではないかと思いあぐねている。
……こんなにも女々しいヤツだったのか 俺は。情けねぇ。
曲を書かねぇといけないのに、その気にならねぇ。
どうしたものかと顔を上げると、今日届いた荷物が視界に入った。液晶ディスプレイ搭載の新型掃除機だ。
……チッ、掃除するか。