第1章 No Name
「え??」
とんでもなく嫌な予感がする。
今だって、自分が悪いとはいえ超寝不足で絶不調な体調の中、無理して会場入り口に座りこんでいる。
トイレはエミと交代で行き、この場所を死守してきた。
No Nameのファンでもなんでもないのに8時間近く頑張った自分を、誰か褒めてほしい。
「開場したら、走るよ!」
エミの言葉のとおり、17時になり開場されると皆一斉に走り始めた。
……怖い、将棋倒しになったらどうするのよ!
そんなことを思っているのはどうやら私だけみたいで、皆すごい形相で会場最前列を目指す。
私とエミはステージの端っこではあるが、一番前に立つことができた。
エミは「やった! やった!」と大喜びしている。
そんな笑顔を見たら、今朝からの苦労が報われた気がした。