第9章 紅茶
マヤが こそこそやっている間に砂時計の砂は落ちきり、リヴァイが紅茶を注いでくれた。
「あ! ありがとうございます。すみません…」
リヴァイはカップを独特な持ち方で掴み 香りを楽しみ目を細めた。そしてそっと口に含んだ。
「……悪くねぇ」
森の中に迷いこんだような深い香りに包まれ、甘味の中に感じられる渋味が爽やかな味わいを生み出す。
「ほんと美味しいです! なんだか果物みたいな…?」
「それはマスカテルフレーバーといって、マスカットみたいな香りがするのが美味いダージリンなんだ」
「へぇ…、リヴァイさん 詳しいんですね」
「紅茶は好きだからな」
「ところでリヴァイさん…、図書館でも思ってたんですけど、変わった持ち方しますよね」
「あぁ これか?」
リヴァイはカップを上から掴んだ手を、少し上げた。
「……Lみたいです」
「あ?」
「デスノートのL。Lのケータイ持ってるとこ初めて見たときになんじゃ!?と思ったんですけど、リヴァイさんのカップの持ち方を見たときもなんじゃ発動しました」
「………」
「目の隈が酷いのも似てますよね~」
「おい、いい加減にしろ」
「ふふ」
ジト目のリヴァイを見て、マヤは口には出さないが可愛いなと思って、微笑んでしまった。
「くだらねぇこと言ってないで、早く食え」
リヴァイにそう言われて マヤはナイフとフォークを手にしたが、すぐに眉をハの字にした。
「リヴァイさん… こんな綺麗で可愛いの、勿体なくて食べられません!」
「そう言いながら、大口開けて平らげるんだろ」
「ちょっと! 大口って失礼な」
マヤは、軽くリヴァイを睨む。
「でもこんなに色々あって…。何から食べたらいいんでしょう?」
「まずは、一番下のサンドイッチ系からだ」
マヤは 素直にハムと胡瓜のサンドイッチを頬張った。うんうんとうなずきながら、ほうれん草のキッシュも食べる。
「サンドイッチもキッシュも 美味しいですね!」
「そうだな」
下段をパクパク食べ終えたマヤは、リヴァイがスコーンに手を伸ばしているのを見て真似た。
「このスコーン 美味しい! このクリームめっちゃ美味しい!」
「クロテッドクリームだ。ほぅ… やっぱり紅茶に合うな」