第9章 紅茶
リヴァイが すっと女性店員を見ただけで、放たれた矢のように彼女は飛んできた。
「ヌワラエリヤをストレートで。彼女には、アッサムをミルクティーで頼む」
「かしこまりました」
マヤはスマートに注文するリヴァイを、やっぱりすごくかっこいいなとあらためて思う。
……私は、女除けのために連れてこられただけ。言ってみれば「虫コナーズ」ならぬ「女コナーズ」な訳。でもなんでもいいや。こうして… リヴァイさんと一緒にいられて幸せ。
マヤは そんなことを思いながら、小さな一口サイズの可愛らしいデザートたちに手を伸ばす。
チョコレートのムースは濃厚で香り高い。抹茶のブランマンジェは 抹茶の苦みとプルプルのブランマンジェの織り成すハーモニーが素敵だ。
甘い幸せを堪能していたマヤは、ふとリヴァイが デザートには手をつけていないことに気づいた。
「あれ リヴァイさん、ケーキ食べないんですか?」
「甘いものは苦手だ」
「ええええっ!? じゃあ… なんでこれ注文したんですか?」
「デザートは マヤにやる」
「ええええっ!?」
「うるせぇな…。ギャーギャー騒ぐな」
「だって!」
「食えるだろ?」
「……そりゃ こんなに美味しいんですもの。いくらでも食べられるけど…」
「なら黙って食え」
リヴァイが怒ったように言う。
マヤは そんな怒らなくても~と思ったが、ふと、あぁそうか… 自分にいっぱい食べさせるためなんだと気づいて、嬉しい気持ちがこみ上げてきた。
「じゃあ遠慮なくいただきます。リヴァイさん、ありがとう」
「……あぁ」
リヴァイは紅茶を飲みながら、マヤが心底美味しそうにデザートを食べているのを見ていた。
……目を見開いたり細めたり、コロコロ表情変えながら美味そうにパクパク食ってやがる。
ねぇリヴァイさん すごく美味しい! 甘いものが苦手なんて言ってないで食べてみて?とか言いながら フォークに突き刺したガトーショコラを差し出してきたときは、思わず食いそうになっちまったじゃねぇか。何が 今更あげないですよ これぜーんぶ私のです!だ。
……こいつ クソ可愛いな。
リヴァイは、マヤから目が離せなくなっていた。