第9章 紅茶
黒いポルシェは、高層ビルの地下駐車場に吸いこまれていった。
車を降り、エレベーターで上層階へ一気に上がる。なんとなく気まずくて、マヤは階数表示の数字をじっと見ていた。
何か視線を感じて階数表示の数字から左に立っているリヴァイの方を見ると、リヴァイの顔がすぐそこにあった。
……近い!
マヤの心臓は跳ね上がった。リヴァイの身長はマヤより少し高いだけだから、顔が近い。あり得ないほど近い。
マヤは顔を赤らめて、慌てて階数表示の数字に視線を戻した。
ポン… やわらかい電子音とともに目的の階に着いた。
リヴァイについていくと、十人ほど女性が順番待ちをしているお店の前で止まった。
「ここだ」
「わぁ… すごい、女の人ばっかり!」
ウェイティングリストにリヴァイがサラサラと、アッカーマン2名と書いているのを横目で見る。
……わぁ、リヴァイさんの字 綺麗!
マヤはさらに思う。
……几帳面そうだな…。車の中も めっちゃ綺麗だったし。
しばらく待つと店内に通された。運良く、海の見える窓際の席だ。
リヴァイは アフタヌーンティーセットを二人前注文した。
飲み物は すべての種類がお代わり自由らしく、まず最初はダージリンをチョイスした。
マヤは どうしたらいいのかわからないので、すべてリヴァイに任せた。
……大体 今日は「デート」ではなく「礼」をしに来たのだから、リヴァイさんの意に沿わなくては。
でも リヴァイさんの注文したアフタヌーンティーセット… 4500円もするよ…。おまけに ×2だし…。お財布すっからかんになっちゃうなぁ。
マヤはこっそり、ため息をついた。