第9章 紅茶
「それになんだか… リヴァイさんが歌ってるみたいでした。声 似てません?」
「……そうか?」
「うーん 結構似てると思ったんだけど。あ! リヴァイさんみたいなタイプの人って、みんなこんな声なのかも」
「俺みたいなタイプってなんだ」
リヴァイの声がさらに低くなった気がして、思わずマヤはリヴァイの横顔を見た。いつにも増して、機嫌が悪そうだ。
「えっと… 自分のことかっこいいと思ってて強引で俺様みたいな…」
「おい、酷い言われようだな」
「でもリヴァイさん、絶対モテますよね?」
……マヤは声には出さなかったが心の中で、だってホストだし…っていうのも追加しておいた。
「女が言い寄ってこねぇと言えば嘘になるが…」
「でしょう~!」
……なんてったってNo.1ホストだもん リヴァイさんは。
「私が思うに… そういうモテる人は大体イケボです」
……モテるって認めたし、彼女いるかどうか今だったら訊いていいかな?
マヤは少し迷ったが、思い切って訊いてみた。
「リヴァイさんって… つきあってる人いるんですか?」
マヤは運転しているリヴァイの横顔を じっと見つめた。
リヴァイはぐっと眉間の皺を深めながら、ひとことで答えた。
「いないが…」
……やっぱりホストというお仕事柄 彼女は作らないのかな…とマヤが思っていると、今度はリヴァイが訊いてきた。
「そんなこと… 訊いてどうする」
「いえ、別に…」
……そうよね… 訊いてどうするんだ… だよね。
マヤはちくりと疼いた胸に手を当て、窓の外を流れる景色を眺めた。