第9章 紅茶
お昼の1時に、いつもの公園前に車で迎えに来てくれることになっていた。
5分前に行くと、リヴァイはすでに待っていた。
マヤが最初に乗車拒否した黒いポルシェだ。
……リヴァイさん 家まで行くと目立つからと公園を指定してきたけど、思いきり目立ってるんですけど…。
マヤはそう思いながら、ポルシェに軽くもたれかかって待っているリヴァイに向かって謝った。
「すみません、遅くなって」
「いや、俺も今来たところだ」
そう言いながらリヴァイは、マヤを上から下まで眺めた。
マヤは その視線に気づいて恥ずかしくなった。
家を出るギリギリまで、ワンピースにしようかパンツにしようか迷ったのだが、ワンピースだとなんだか気合を入れているように思われるのではないかと心配になって、結局 白のボリュームニットにデニムのスキニーパンツにした。
助手席のドアを開けてくれたリヴァイにお礼を言いながら、やっぱりワンピースにした方が良かったかなと思う。
リヴァイは黒のジャケットに白のシャツ、黒の細身のパンツのシンプルな装いだが、仕立てが良く決まっている。
いつもは学校帰りの制服で リヴァイとの服装の釣合など考えたこともなかったが、今日は会っていきなり現実を突きつけられた。
……これじゃ 大人の男と子供だ。
それに… 車もすごいし。
大体よく考えたら、男の人の車の助手席に乗るのは人生初めての経験だ。父親の運転する車にしか乗ったことがない。
シートは本革で、小柄なマヤが すっぽり包みこまれるような、ゆったりとした広さだ。
シートベルトを締め、重低音のエンジン音を響かせ発進した車内で、マヤはガチガチに緊張していた。