第7章 不在
「もうっ また!」
図書館の学習室で 解いた過去問を自己採点していたマヤは、思わず声が出てしまった。
先ほどから単純な計算ミスばかりしている。こんな計算ミスをするなんて、いつものマヤだったら ちょっと考えられない。
理由は、よくわかっている。
……リヴァイさんに、会えなくなったからだ。
出会ったばかりなのに私の心に棲みついた。そしてそのことに私が気づいた途端に、消えてしまった。
リヴァイさんの顔や声… 仕草のひとつひとつが、私を苦しめる。
私が望んでいないのに、私の中でどんどんふくらんでいっぱいになる。そのたびに、やるせなくて泣き出しそうになる。
そんな状態から逃げ出したくて、マヤはリヴァイの姿が浮かぶたびに、消し去ろうとした。
なかなか簡単には消せないけれど、努力すれば… きっと思い出せなくなるはず。
……そう信じて、何度も何度も頭の中の彼を消しつづけた。
マヤが頭を両手で抱え目をつぶり、際限なく浮かび上がるリヴァイを消そうとしていたそのとき、ドアのひらく音がした。
ゆっくり目を開けると、今まさに脳内を占領しつづけて マヤを苦しめているリヴァイが立っていた。