第6章 公園
「ごめんなさい。変な悩みですよね。私… こんなこと誰にも話せなくて…。ずっと何か違うんじゃないかって引っかかってて…。でもどうしたらいいか、わからなくて…」
ついにはマヤの目から涙があふれ出てきた。
リヴァイは黙って空を見上げたまま、静かに話し始めた。
「お前は別に何も変ではないし、駄目でもない。大体 今まで誰にも話したことがないなら、誰もお前がそうやって悩んでいることを知らない。はたから見たお前は良い学校に通っている優等生で、おまけに泣く子も黙る東聡大学を受けようとしている」
リヴァイは その骨ばった白い指で、顔を半分隠す。
「ハッ、その上落ちたらどうしようではなく、別にいきたくない、いきたいところもないし やりたいこともない、どうしたらいいかわからないとはな…」
「マヤ。お前は みんなが夢を明確に持って、悩みもなく生きていると思っているのか。そんな奴は滅多にいない。夢があるとは口にしても、心のどこかで不安を感じているものだ。夢があろうがなかろうが、やりたいことがあろうがなかろうが、誰もが苦しんでいる」
マヤの方に体を向けながら、リヴァイはつづける。
「人生は選択の連続だ。どちらを選んでも結果は誰にもわからない。お前の進むべき道が霧に覆われていても、進むしかねぇ。そのときのお前の気持ちがどうであろうと関係ねぇ。お前が夢を持っていようがいまいが、霧はそこにある」
リヴァイは優しい色を瞳に宿しながら うなずいた。
「今ここにいるマヤが、そのまんまのマヤで、それがすべてだ。お前の瞳で いつか真実を見たいのならば、苦しみもがきながらも進むしかねぇ。その先に何が見つかるのかはわからない。でもそれでいいじゃねぇか。悩みながらもその都度、悔いなき選択をしつづけることに意味があり、それが生きるってことだと俺は思う」
リヴァイは また空を見上げて、小さな声で最後につぶやいた。
「不安なときは そばにいるヤツを頼ればいい。一緒にいるだけで、救われることもあるんじゃねぇか」