第5章 帰り道
「……いたかった」
「え?」
マヤはリヴァイの答えがよく聞こえず、訊き返す。リヴァイの瞳が切なげに揺れている気がした。
でもそれは一瞬のことで、リヴァイの瞳は すぐに色をなくした。
「……暇つぶしだ」
「暇つぶし… ですか…」
それ以上 何も訊けない雰囲気が場を支配する。しばらくお互い無言でいたが、唐突にリヴァイが訊いてきた。
「お前、恋人はいるのか?」
思いがけもしないリヴァイの言葉に、マヤの心臓は早鐘のように打ち始めた。恥ずかしくて、顔も赤くなっている。
「……いませんけど…」
「では問題ない」
「あの… 問題ないって?」
リヴァイは答えない。マヤの顔を じっと見つめる。マヤは気まずくなって、先に視線を外した。
……何が問題ないのだろう。大体暇つぶしって何?
どうして… そんな不機嫌そうなの?
答えの得られない疑問が ぐるぐると頭をめぐる。そうやって歩いているうちに、家に着いてしまった。
立ち止まって早口に言う。
「ここです、私の家。送ってくださってありがとうございました!」
玄関のドアを閉めるときに、リヴァイが立ち尽くしているのが見えた。