第1章 No Name
No Name。
今や その名を知らない者などいない、大人気のロックバンド。
彼らの特徴は、メンバー3人が顔に包帯を巻き 素顔を隠していること。
顔はもちろん、名前も年齢も一切合切の素性がベールに包まれている覆面バンドだ。
しかし その切り裂くような音楽性と圧倒的な実力で、カリスマ的な人気を博している。
エミも例に漏れず夢中になり、口をひらけば「No Name」の話題ばかり。
曲も聴けとイヤホンをマヤの耳に突っこんでこようとするが、いつも笑いながら逃げている。
クラシックが好きなマヤは、騒々しいロック音楽には興味がなかった。
それを言うとエミは、
「えー、ロックだってバラードもあるし すごいんだってば!」
と怒るが、興味がないものはない。