第4章 図書館
駅の改札を通り抜けたとき、声をかけられた。
「「マヤ!」」
エミと恵子だ。この二人は下り線、マヤは上り線だ。下り線の電車が接近しているアナウンスが流れている。
「また明日ね~!」
と、二人は走り抜いていった。マヤはバイバイ~と手を振り、トントントンと上り線のホームへの階段を下りる。しばらく待つとマヤの乗る電車が来た。
15分ほど揺られると降車駅だ。空いている席に座ると、とりあえずスマホでメッセやメールなどを確認したが、すぐに鞄に片づけてしまった。
電車の中で色々とするのが苦手で、立っているときは窓の外の景色を眺め、座っているときは下を向いて目を閉じている。そうしていると段々と感覚が研ぎ澄まされていき、電車のガタンゴトンという振動と自分の鼓動が重なる瞬間に いつも不思議な感覚を覚えていた。
この日もその感覚が脳内を駆け抜け、はっと目を開けたそのとき、降車駅にまもなく到着するアナウンスが流れた。
家の最寄り駅に降り立ち、改札を抜ける。図書館は歩いて1分ほどの距離だ。入館し、二階にあるグループ学習室に向かう。五部屋あるグループ学習室は、一部屋だけしか利用者がいなかった。
マヤは誰もいない学習室に入り、参考書を広げた。