第18章 二千年後の君へ
春になり、私は無事に東聡大学に合格した。
そして大学生活にも慣れたころから、エルヴィン社長の提案どおりに No Nameの…いや リヴァイさんの専属マネージャーとして学業の傍ら、週に数日 勤めている。
この件については あまり良い顔をしなかった父を、エルヴィン社長を心から信頼している母が、猛烈に後押ししてくれたことが大きい。
また一時期、エルヴィン社長は私を「現役東聡大生タレント」として某ゴールデンタイムのクイズ番組回答者として送りこもうと画策したが、リヴァイさんの猛反対に遭い、頓挫した。
確保したクイズ番組の回答者の枠には、KRH104のアルミンが私の代わりに入り 11週連続でクイズ王の座を守っている。
No Nameは その後「Clarity」を発表し、「跪け 豚共が」につづくミリオンセラーを記録した。
この「Clarity」は、リヴァイさんが私に捧げた曲だ。
私を迷いのない明確な気持ちで愛している、それに限界はない…という内容だけど 私が、
「ねぇ リヴァイさん。この “満ちた月夜に狂える衝動” ってなぁに?」
と聞くと、くしゃっと私の髪を撫でながら、
「お前が、夜空から落っこちてきたってことだ」
と、頬を緩めた。
私が東聡大生になった最初の冬休みは、No Nameが前年に引きつづき パークシアターでおこなわれるエアロスミスのレジデンシー公演のオープニングアクトを務めることになり、リヴァイさんと一か月ほど離れて過ごした。
毎晩電話して顔と声は充電できたけれど、生身の素肌にふれたくて仕方がなかった。
一度だけ「スティーヴンがうるさいから出ろ」と言われ、あの世界的大スターのスティーヴン・タイラーさんと話した。
スティーヴンさんは、
「リヴァイは頼りねぇから、嬢ちゃんがしっかりしろよ?」
と、目尻に皺を寄せて笑っていた。
後ろで余計なお世話だ 糞ジジィとつぶやく、リヴァイさんの声が聞こえた。
リヴァイさんは、スティーヴンさんと毎晩飲んでいたらしい。